2011年7月1日

about songcatchers

先日、『Songcatcher 歌追い人』という映画を観た。
アメリカのアパラチア山脈で歌い継がれている民謡(バラッド/ラブソング)にまつわる、事実・史実も踏まえたストーリー。

音楽博士の女性がその地に赴いた際、今では当地のイングランドやスコットランドでも聴かれなくなってしまった伝承歌が移民たちによって息づいているのを知り、広く世に紹介しようとする。いまの時代では考えられないくらい大きな録音機を、馬車で山奥まで運んで録音したり、歌ってもらったメロディを楽譜に記録したり。快く協力する人もあれば、その行為は歌を盗む、ひいては自分たちの生活・文化を奪う事だと反発する人もいる。それでも金銭(生活)のために引き受けざるを得ない人もいる。そういう様々な意見・立場が、すごく普遍的な人間関係のあり方に思えて、あれこれと重ね合わせて考えてしまう。
それから、民謡を採取する側(songcatcher)の葛藤、
社会的な功績への欲望/純粋にその音楽に感動して広く伝えたい願いのふたつが、同時に存在して、その濃淡・比重がじわじわと変化していく様がまたすごく良かった。

少し抽象的な言い方になってしまうけれど、自分自身はsongcather の恩恵を受けて過ごしている人間なのだと思うし、そのことに対してどこか後ろめたさを覚えた。受けた恩恵への借りを、その源泉に対して何にも返せていないような感じ。出来る限りの感謝を伝えようとは思っているけれど、よかれと思ってすることももしかすると裏目に出ているのかもしれない、などなどと。

偶然にも数日前、友人とふたりで、世の中に既にある素晴らしいものを人に紹介したいなあ、みたいなことを話をしていたのを思い出す。自分の主張とか、利益とかの為じゃなく。と、それはいまも変わらぬ気持ちなのだけど、それで多くがうまくいくわけじゃないし、何が正しいとかでもない。人や物事の関係はすごく複雑なのだなあと、当たり前のようなことではあるが改めて痛感した。

とはいえ、映画はそんな内省を誘うばかりというでは全然なく、全編にわたって流れる歌も良いし(それが観たきっかけ)、終始楽しんでもいた。上記のような事柄のほかにも、各々の人間関係とか時代背景とかが密接に混ざり合った、見所のある映画だったなあと思う。

あと、さりげなくタジ・マハールが出演してて、ミーハー的にも喜んでしまった(良い場面だった)。

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