苦味もあじわい

念願のスペースオーでライブしてきました。とても楽しかったのと、ちょっとだけ苦い気持ちも残して。

会場のスペースオーは、面白そうなライブをたくさんやっている場所だなーとyoutubeチャンネルを前々から時々視聴していた。いつか縁があればここで演奏してみたいなーとぼんやり思いながら。今でこそだいぶフットワークも軽くなってきたが、下の子が生まれてこの2年くらいは超地域密着型の生活で、それまではホイホイ足を運んでいた神戸（や京都）はとても遠く思えたのでした。

で、スペースオーのことを知ってからしばらく時間が経ち、去年の夏。AMステーションというライブイベントではやしぽーさんと久々に会って、その後浜谷家でセッションをしていたら、ぽーさんオーにホームのようによく出演しているようだったので。ここでライブやってみましょうか、せっかくならイベントにしましょうかという運びになった。まあ、成り行き的にというよりは、わたしがセッションしましょうライブしましょうとラブコールを送って付き合ってもらったようなものですが。

それがこの7月のこと。そして決まったライブは9月の後半。「ライブまで二ヶ月あるんかあ、これはやばいなあ」と思ったのでした。「めっちゃ気負って準備してしまうわ…」自分の心配性な性格上、時間があればあるほど隠し芸大会みたいに色々ネタを仕込みがちで、それって即興演奏にとってはあんまり好ましくないことなので。準備したことをやってしまうと、すなわち相手の演奏に反応できなくなってしまう。うーーーーん、と考えてから「とりあえず色々仕込んでみよう」「でも、それからそれを全部捨ててしまおう」と曖昧な計画がはじまりはじまり。これまで日の目を見なかった機材を総動員していろんな自分なりの使い方を探って、とりあえず使い方を身体に叩き込んだ。そんで「当日は同じことは絶対しないぞ、ちゃんと聴くぞ」とだけ決めて、ちゃんとその場で演奏するスリルを楽しもうと思った。ふりかえってみれば、そういう生真面目風決意がすでに肩の力入ってるねんなのだけど。

そして当日、本番。だったのだが、まあ単純に、まだまだ自分の持っている道具を使いこなせなくて、それで頭がこんがらがったりして、あまりはやしさんの演奏を聴けていない瞬間が訪れたり、それで繕うような手癖ギターが発動したりしてあらら。まだまだわたしひよっこでした。

とはいえしかし、楽しくなかったのか？というと楽しかったのです。「こらあかんなあ」という瞬間もあったという話であって「あ、いま面白いなー」と思う瞬間もまたあって。ちょっと頭の火照りが落ち着いて、空間に音が響いているのを感じられたときは、火からおろした鍋からフワーッと立ち昇る湯気になったような気持ちよさがある。こういう瞬間増やしたいな。エゴは浄化させていきたいな。また即興はやってみたいな。そんな感じのライブでした。

ところで、いわゆるちょっと名残のある演奏をしちゃうと、昔はそれはそれは落ち込みがちで「おれはもうだめだ…」と思っていたものでしたが、そういう落ち込んでますよ空気って誰にとってもっていうか、自分にとって何にも良いことがないんだと、長年福祉の支援職として働きながら最近ようやく身をもって学んだので。そこは、大丈夫だった。少しは成長したのかな。あるいは単に神経が図太くなったのか。ちゃんと睡眠とたんぱく質摂ってるからかもしれない。こころの問題は技術の問題でもある。こころを変えるのは技術だ！なんて…ちょっと万人向けに言語化できてなくて何言いたいかわからなすぎるフレーズだな。

この日は、久々に会う音楽活動仲間とか知り合いもたくさんいたので、変に沈まずにみんなとちゃんとたくさん喋れてとても楽しかった。みんな思い思いにワイワイやっていて、いい空気でした。なんかこういう場所にいるとホッとするというか安心する。

あと、イケッツさんが終演後にめちゃくちゃ詳しくシンセなどの機材解説をしてくれて、生楽器とシンセが合わせる時のポイントについての理解が深まる。そうか、シーケンサーが意図したのと違うカウントから演奏すると電子楽器にはかなりきついのだな。イケッツさんはいつもかなり惜しみなくいろんなことを教えてくれて優しいなーと思う。前に「ギターにもシンセサイズできる部分がある」という私的名言を残してくれて、それが啓示のようになってギターエフェクターの見え方が完全に変わったというか再定義されたのでした。いままで私のワウはチャカポコワウペダルでしかなかったが、今は周波数を変える機材になった。音楽続けていると自分より音楽を大事にしている人や詳しい人に出会えて、ほんとおかげさまです。皆さんから学んで私も精進します…という感じだ。

そんなわけで、楽しみにしていたライブを何はともあれ楽しく過ごせて無事帰宅。今日は昨日の荷解き。機材の繋ぎ直しは儀式のようで、ちょっとだけ昨日までの自分と変わったような気分になる。内にこもって自分の声ばっかり探しがちな私だが、それよりもちゃんと人の声に耳を傾けたり、その時その時を楽しんでやっていきたい。がんばるぞ。