2023年12月18日

ライブ後記

 


即興を面白くするのは何なんだろうか。地道な鍛錬?鍛錬のメニューさえわからないままだが。

必要なものを考えてみる。やわらか頭と職人的手足、という言葉が浮かんだ。伸び縮みするものとして音楽の時間を扱って、こねて遊べること。うーん、伝わらないだろう言い回しだ。社会的な共有言語でそのこころを説明するには私は力足らずな感じだが、ちょっと自分の考えの整理のためにやってみよう。

この前の土曜日は、森田さんとの即興デュオ「オデッサの林檎」2回目の演奏でした。良かったとか悪かったとかは、わからない。わからないからこその最初の問いなんでした。


即興。

それも人とする即興。

というのは、今のところ自分のメインである弾き語りスタイルよりも、良し悪しを判断するポイントが判然としないもので、そのもやっとした状態を自分に溜めておけず、なんかある程度総括してライブ毎スッキリしたいなーという欲望がある。まずは比較前提として、弾き語りでのじぶんのチェックポイントをおさらい。


①声やギターが、曲のイメージにあった音色・フレーズになっているか

②練習してきた内容の発表会にならず、その場で出てきた音やフレーズに正直になれたか

③聴いている人に良く思われたい感じで技巧を披露しなかったか


あたりが自分の三大項目。と、ここまで書きながら、漠然とした「即興わからん感」を覚えていたけど、このチェックポイントてそれなりに即興にも当てはまることやんねーと今更ながら。特に②③なんかは。

①の「曲のイメージにあった云々」というところは、確かに即興において「あらかじめある程度設定された特定のムードとかテーマ」はないけれど、それをダシにして私は “即興で何を演奏すべきか的な、あるいは “生きるべきか死ぬべきか” 的なヒロイックな懊悩ポーズをとっているだけなんだろうな、それ③できていないのに近いことかもな。結局ストイック風な自分でありたいだけなんですよね、承認欲求やんあーしょうもな。


とはいえ、そうやって自分のしょうもなさを認めたあとにこそ、より真っ当な問いが残るもので。それをやっていかなければ私はこのまま劣化していくばかりなので。さてさて。

あらかじめ用意されたテーマがない演奏とは、何を表現したら良いのでしょうか。その場で相手(この場合は森田さん)が出した音や、佇まいに対してコメントを出すように音を出せばいいのだろうか。会話で考えてみると「阿吽の呼吸」が良いのか。


しかし、

例:「こんにちは」「こんにちは」「元気ですか」「うん、元気です。そっちは?」

みたいなウォーミングアップ的会話やそれに連なるやりとりって日常性がありすぎて面白くないし(あいさつ自体は良いものです)、反対に "何かしら面白いことを言おう!言いたい!" というのももってのほかでしらけてしまう。じゃあ自分はどんな会話が面白いと思うか。それは文字情報だけでは言い表せない要素(ありますよね、間とか声質とか表情とか無数に)を多分に含んでいて、場合によってはさっきの例文的なやりとりでさえ味わい深くて笑ってしまうことだってあって。狙ってやっていればどんな会話だってしらけるものだし、とどのつまり自分だったらこれが面白いなーって思うのって、お互いマジレスをしていてそれが噛み合ったり噛み合わなかったりしているライブ感みたいなものかもしれない。わざわざ人と会ってまで・人前でまでやりたいことって、社会性全開のビジネストークと対極みたいなものじゃないだろうか。そう仮定してみると、「頑張り」みたいな概念自体がまちがっているとも言える。


自分が日頃から「これが自分にとって真実っぽいなー」というものをこね続けて、その営みがある種自分稼業の職人技術として磨かれていく。で、別の職人的なひとと出会ったら、お互いの専門性の重なり合う関心ごとを見つけ、それについての意見交換をする。そのやりとりを、また別の人が「この人たちの関心ごとと私の関心ごと、わりと近いなー立ち聞きしていたらなかなか面白いなー」という感じでやってくる(これがお客さんにあたるポジションですね)。ニッチな関心ごとであればあるほど少ない参加人口になるのは概ねアンコントローラブル。でも数と価値は特に関係ないから。それをどうにかしたいとかはマーケティング的問題だから。この日は盛況でよかった!し、それはそれでめちゃくちゃ大事にした方がいい問題ではあるだろうけど今回の問いとは別枠なので割愛。わたしはいつでも割愛気味だな…。


即興だからといってことさらにシリアスに考えすぎ(るポーズをとら)ず、なるべくならいつだって自分にも人にも誠実に向き合って、それでいてやわらかに。ほとんどトンチのような難易度の高い荒技かもしれないが、どうにかやっていけたらいいな。その営みがやがてどこに向かうのかという未来志向は一旦置いておいて。願わくば、その足掻きを「面白い即興」として捉え直す技術が身につきますように。一緒に面白がれる同士といられますように。Long May We Run!!(強引におわり)

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